禅僧の徒然日記

十人十色

人の性格は様々で、いきなり相手をガツンとやる圧力型タイプがあるかと思えば、万事に控えめで、じ~と相手の言葉に耳を傾ける温和しタイプがある。どちらが良いかという問題ではなく、これは性格の違いである。ややもするとそう言う人間のタイプの方に気持ちが行って、あいつは良いがこいつは駄目だという評価をしがちである。しかし外に現れる部分より、その人が正しい見地を掴んでいるか、真っ直ぐな人生観を持っているかが重要である。近頃は我々僧侶の世界でも、外国へ行って禅会を開き、修行の指導をしてきたなどと言うことが一つのステータスのようになっている。別にとやかく文句を言う筋合いではないが、それよりも足下の日本の若者を鍛えて有為な人材を地道に育てて行くことの方が遙かに重要である。本当に修行したければこっちへ来てやれば良い。さて最も重要なのは真正(しんしょう)の見解(けんげ)である。苦と楽・善と悪・愛と憎、そう言う二元的対立の世界から、何ものにも束縛されない正しい生き方が出来ているかどうかである。そこに人間そのものの価値がある。真実この「無」が解っていれば、強いて求めなくとも自ずから行いが正しくなる。人に惑わされるな、地位や名誉に騙されるな、外観の何ものにも惑わされるな。何ものにも騙されぬ人になれ。これが臨済禅師の教えである。