中国・習近平の「異常さ」の正体…ウイグル人の「迫害」を止めようとしない「本当の理由」(橋爪 大三郎) | マネー現代 | 講談社(5/5)

 橋爪 大三郎 社会学

新疆ウイグルで起きていること

新疆ウイグルで、ウイグル人の迫害が続いている。

トランプ政権は、これを「ジェノサイド」(大量殺戮)だと断じた。バイデン政権も、中国の習近平政権に対して、同様の厳しい態度で望む模様だ。

習近平政権で「ウイグル人の迫害」が国際問題化している photo/gettyimages
 
ジェノサイドと言えば、ナチスユダヤ人虐殺(ホロコースト)を連想する。ナチスは奇怪な「人種理論」をもとに、ユダヤ民族をひとり残らず地上から抹消してしまおうとした。
まさか本気ではあるまい、と誰もが油断していた。でも本気だった。気がつけば600万人とも言われる人びとが、収容所に押し込められ、毒ガスで無惨に命を奪われた。中国が新疆ウイグルでやっていることは、これと同じホロコースト(民族絶滅)なのだろうか。

人権を踏みにじる、ひどいやり方には違いない。

けれども、新疆ウイグルで起こっていることは、ユダヤ人虐殺(ホロコースト)と違った種類のことである。これは、中国共産党をかばって言うのではない。性質の違うことがらは、どこがどう違うか見極めるべき。それが学問の第一歩だからだ。

これは「洗脳」だ

ユダヤ人虐殺は、人びとの身体を標的とし、物理的に抹殺することを目的にした。身体を滅ぼせば、精神も滅ぶ。身体も精神も、存在を許さない。根こそぎその存在をなくしてしまうのである。

これに対して、ウイグル人の迫害は、人びとの身体ではなく精神を標的とする。身体を物理的に活かしたまま、その精神を入れ替え、「中国人」にしてしまうことを目的にしている。

具体的には、どうするか。

自分の「精神を入れ替え」てください、などと思うひとはいない。精神を入れ替える、とは、洗脳である。本人の協力はえられない。ならば本人を拘束し、無理やりでも「洗脳」する。

洗脳は、これは洗脳ではありません、自分からそう考えました、と言ったときに完了する。これが、「職業再教育センター」がやっていることである。

 

なかには拷問で、虐殺されるひともいる。ほかの人びとを恐れさせ、抵抗をあきらめさせるためだ。これも洗脳の一部である。

ウイグル人は、もともと新疆ウイグルに住んでいた。自分たちは民族だという自覚がある。民族なら、「民族自決」の原則によって、独立できてよいはずだ。実際、過去、東トルキスタン共和国として独立を宣言したこともある。

中国共産党は「民族自決」を認めない。中国は多民族なので、そんなことを認めればバラバラになってしまうと恐れている。そこで代わりに自治という。「自治」とは、独立を認めないぞ、中央政府の言うことを聞きなさい、という意味である。

 

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